予防策から
新たに入手した魚は、まず別の水槽(検疫用)に収容して数日間は様子をみることが大切です。最近はめっきり少なくなりましたが、購入したばかりの魚をすぐに他の魚を収容している水槽に入れると、数日後に他の魚が調子を崩すことがよくあります。これは、新たに入手した魚が病原体を持ち込んだためと考えられます。
また、病気の発生を防止するのに大切なことは、まず病気の発生原因を作らないことです。たとえば、餌のやり過ぎとか水槽サイズや濾過能力に合わない詰めすぎ飼育が原因で水質悪化やスレ傷、ストレス・換水による急激な温度異常・酸素欠乏などが病気発生の要因になります。しかしどんなに注意していてもディスカスは病気になるものです。病気の兆候が現れたら速やかな、対策を講じることが大切です。早期発見・早期治療が重要です。
こんな行動に要注意!
① 何かに体を擦りつける
② 異常な泳ぎ方をしたり、水槽の隅などで静止している
③ 体色が異常に黒い
④ 体表に出血・粘液の異常分泌がある
⑤ 急に摂取しなくなる
⑥ えら呼吸が平常よりも速い
カラムナリス病(尾ぐされ病)
温水性淡水魚に頻発する代表的な細菌性疾患で各ヒレが先端から溶けたり、ただれたりする。
[原因]フレキシバクター・カナムナリス菌
[薬品]グリーンFゴールド、パラザンD、エルバージュ
エロモナス病
体表のスレ傷より全身感染を起こす。
[原因]エロモナス菌
[薬品]抗菌剤の経口投与または薬浴
水カビ(わたかぶり)病
体表の一部に綿毛状のものが着生しているので外観的特徴から容易に判断できる。
[原因]カビ(真菌)の一種
[薬品]グリーンF、メチレンブルー
淡水性白点病
体表・ヒレなどに肉眼的に多数の小白点が認められる。
[原因]原生動物の膜口絨毛虫の寄生
[薬品]メチレンブルー・グリーンF、マラカイトグリーン
腸管鞭毛虫症
例外なく体色が黒化し、遊泳が無気力・不活発となり摂餌しなくなりヤセの状態となる。しばしば白色糸状の糞を付着させていることがある。
[原因]ヘキサミタ様の鞭毛虫(原生動物)
[薬品]フラジール(商品名)を魚体重500gにつき10gを経口投与する
エラ単生虫病(エラ病)
発生頻度はきわめて高い。エラ蓋の開閉(呼吸)が平常よりも早く体色は黒変している。水面近くを浮遊し、力なく静止するなどの平常とは異なる泳ぎをする。
[原因]単生虫類のエラへの寄生
[薬品]水10リットルあたりホルマリン0.5~1ccを入れ2~3時間の薬浴
胃拡張症
外観的に腹部が膨出いているので容易にわかる。
[原因]消化不良・便秘 (赤虫給餌でおこりやすい)
[手技]絶食/やや水温を上げてみる。餌種変更
ペーハー(pH)ショック
大量の換水などによる水質の急変で起こり、体表の粘膜が剥がれ浮遊します。
[原因]飼育水のpH異常
[手技]定期的な少量こまめな換水、購入時の慎重な水合わせ
ホルマリン
ホルマリン浴をする場合はスレ傷を治療した後にしてください。ホルマリンは飼育水10リットルに対して0.5~1ccが安全量です。劇薬であるため十分な観察が必要です。このとき、濾過バクテリアにも相当なダメージを与えていることを忘れないでください。ただし、個体によってはこれくらいの濃度でも強すぎることもありますので、治療中は必ず魚の状態を観察しながら、異常が出た場合はただちに水換えを実行してください。水が白濁したら1/3~1/2 を換水してください。薬浴後はほぼ全水量を水換えし、その後2~3日の間隔で3回くらい繰り返します。
※ちなみに、私が使用する250ppmのホルマリン液とは水4リットルに対して市販のホルマリン1ccを希釈して使います。20分前後の薬浴をしますが、ディスカスの様子をしっかり観察しながら実施しないとかなり危険!ですので、おすすめできません。責任持ちません。
・エルバージュ (上野製薬製造) フラン剤系、主成分はニフルスチレン酸ナトリウム。グラム陽性菌に対して有効。
・パラザンD (日本動物薬品) 主成分はオキソリン酸。エロモナス病に有効。
・メチレンブルー・マラカイトグリーン 白点病の治療
・グリーンFゴールド (日本動物薬品) ニトロフラゾン・スルファメラジンナトリウムが主成分。細菌性感染症の治療
・マゾテン (バイエル・ジャパン製造) 有機燐系、主成分はメトリホナート。イカリムシ・ウオジラミ・鞭毛虫・カピラリアの駆除
・フラジール(塩野義製薬) 主成分はメトロニダゾール。鞭毛虫(原虫)の駆除、腸管鞭毛虫症の治療(薬浴)
・コンバントリン(ファイザー製薬) 主成分はパモ酸ピランテル。鞭毛虫(原虫)の駆除、腸管鞭毛虫症の治療(服用)
・ホルマリン (日本薬局方) 40%前後のホルムアルデヒド水溶液、劇薬指定品。エラ病・一般器具の消毒
近年、一般人の薬品入手は厳しく制限されておりますので、医療薬品(人間用)であるフラジールやコンバントリンはほぼ不可能かもしれません。むやみな薬品乱用はやめましょう!!